UX(User Experience)とは、製品やサービスを通じて、ユーザーが得られる体験価値を指します。
UXの重要性に関しては、皆様ご存じかと思いますが、どのようにしたら、ユーザーが素晴らしいUX得られるのか、UX改善を通じて、どのような課題解決ができるのか、腑に落ちていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
UX改善をおこなう上で重要になってくるのが、UXリサーチです。UXリサーチとは、UXに関する調査の総称で、UX改善をおこなう上での最も大切なプロセスのひとつです。
今回のウェビナーでは、弊社ユーエックスワンカンパニー所属の現職UXリサーチャーの田尾が、UXリサーチを通じて、どのような課題解決ができるのか、現場での経験を通じて、UXリサーチの価値について語ります。
UXの最前線である、現場の生の声が聴ける貴重な機会となっておりますので、是非ご参加ください。
セミナー内容
現職UXリサーチャーが語る! 今改めて考える、UXリサーチの価値とは?
- 登壇者挨拶
- そもそもUXとは何なのか
- 業務でのユーエックスワンのクリエイターの動き方
- 課題はどんなものがでてきたか
- 私が考えるユーエックスワンのクリエイターの強み
- まとめ
登壇者紹介
田尾 柚花
株式会社メンバーズ ユーエックスワンカンパニー UXリサーチャー
ディレクション業務など経験し、現在はUXリサーチ業務を担当。
1.自己紹介
本日登壇をさせていただきます。田尾 柚香と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
まず私の自己紹介をさせていただきます。
株式会社メンバーズ ユーエックスワン カンパニーに所属しており、担当してきた業務はディレクターとUXリサーチャー、デザイナーです。
次に簡単な経歴をご紹介させていただきます。
2018年4月に株式会社メンバーズに新卒で入社をいたしました。その後、教育関係のデザインに携わり、金融関係の会社に常駐して運用ディレクションを担当しました。2019年4月からは現在のユーエックスワンに出向し、8月から飲料系の健康食品部門に常駐して運用改善ディレクションを担当しております。
最近は2021年7月からメーカー関係のリサーチ部門に常駐してUXリサーチを担当させていただいております。今の常駐先では私よりもUXに関して経験豊富な方がたくさんいらっしゃるので「日々勉強」という気持ちで過ごしております。
ちなみに私がUXに初めて関わりを持ったのは大学時代でした。元々絵を描くのが好きでしたので、なんとなく「デザインをやりたい」と高校時代から思っておりました。
興味を持ったきっかけとしては、大学説明会の時に学科の紹介でデザインの説明がありまして、そこで子どもの目線と大人の目線から見た景色の比較画像を見せられました。同じものを見ていても「目線が異なると得られる体験が全く異なる」ことに気づかされ「人それぞれの体験に寄り添ったデザインが大切」であることを学びました。
また大学では人を深く知ったデザインをおこなうには「リサーチ」が必要であることを学びました。
2.ユーエックスワンとは?
次に私が所属している会社を簡単に紹介させていただければと思います。
「メンバーズ ユーエックスワン」は株式会社メンバーズのカンパニー会社です。
「人」を基点に新たな体験をデザインし
心豊かなよりよい共創社会をつくる
をビジョンとし、日々業務に励んでいます。
サービス形態としては、UXリサーチスキルを保有する正社員常駐型支援サービスです。
ディレクター・デザイナー・コーダーのスキルに加えて、UXリサーチスキルを保有するデジタルクリエイター人材を正社員常駐型で提供し、いつでもどこでも気軽にユーザー評価をおこなえるとともに、ユーザー評価以外の業務ではディレクター・デザイナー・コーダーなどクリエイターが元々持っているスキルにて業務を遂行していきます。
3.本ウェビナーのゴール
次に今回のウェビナーのゴールについて説明します。
今回のゴールは
「UXリサーチで改善できる課題とは何か?」
ということを知っていただき、実際の業務でUXリサーチャーがどのように機能するかイメージを持っていただくことです。
4.UXリサーチとは何なのか?
「UXリサーチ」は色々な捉え方があると思いますので、今回のウェビナーでの言葉の定義をさせていただきます。
UXリサーチとは
UXデザインをするための手法の1つ
「UXデザイン」はプロダクトやサービスがコモディティ化していく中で、差別化するための手段として現在必要とされております。
では「UXデザインとは何なのか?」といいますと、ご存知の方も多いかと思うのですが、
「UX」とはユーザーエクスペリエンス、つまり「ユーザー体験」のことを指します。
ISOの定義によりますと、
製品、システム、サービスを使用をした、および/または、使用を予期したことに起因する人の知覚(認知)や反応
となっております。つまりユーザーがプロダクトやサービスを利用する前から利用後に起きる認知や反応のことを指します。
ですので、UXデザインとはプロダクトやサービスを使用する前から使用後の一連のユーザーの体験をよりよくするために設計をおこなうことです。
そしてUXリサーチとはその設計をおこなうために必要な情報を集めたり、方針を決定する際に利用する手段であると私は考えています。
次に「UXリサーチはどのような場面で利用できるか」についてご説明させていただきます。
UXリサーチを利用するタイミングとしては主に4つありまして、
1つ目は企画段階
2つ目はリリース前の検証
3つ目はリリース後の検証
4つ目は改善施策の優先度付け
です。
1つ目の「企画段階」では主に「企画の方向性が正しいかどうか」を確認していきます。私は企画の受容性の評価もここでおこなう必要があると思っております。例えばユーザーに「こんなサービスがあったら利用したいか」「企画を利用するような状況を体験したことがあるか」などについてインタビューします。
次に2つ目の「リリース前の検証」です。ここでは企画がある程度固まった状態でプロトタイプを使用しながらユーザーのニーズに合っているかを確かめます。
次は3つ目の「リリース後の検証」です。既に運用が始まっているサービスなどがここに当てはまります。実際に運用していると新たな課題点が見つかったり、アクセス解析のデータなどが溜まることで新たな発見点が見えてくると思いますので、ここで検証をおこないます。
例えば実際に運用中のサイトを触っていただきながらタスクをおこなっていただき、その様子を観察する「ユーザビリティテスト」もここでおこなうことが多いです。後は運用中のサイトのヒューリスティック調査もこの段階でおこなうことが多いです。
最後は4つ目の「改善施策の優先度付け」です。沢山のサービスを利用していただいているコアユーザーにインタビューなどをおこないながら、出した課題の優先度をつけていきます。
このようにプロダクトやサービスについて企画から運用していくまで、様々な場面でUXリサーチが使われているということがわかるかと思います。企画の段階からリリースの後の検証までは、後で実例を交えてご説明させていただきます。
5.業務でのユーエックスワンクリエイターの働き方
次に実際にUXに携わるクリエイターが業務の中でどのような動き方をするのか、ユーエックスワンのクリエイターを例にしてご紹介します。
UXリサーチ業務の流れはこの通りです。
まずクライアントから課題定義、または常駐しているリサーチャー自身がプロダクトやサービスの課題の発見をします。次にその課題をどうすれば解決できるか、手法の検討や調査の設計などをおこないます。
その後に調査をおこないまして、調査内容をまとめ、改善案の考案などをおこない、元々持ち合わせているディレクター・デザイナー・コーダーのスキルを発揮し推進をしていきます。
図にある「レポートの作成 改善案の提案」に関しましては、ユーエックスワン独自のものですので、他のリサーチャーとは動き方が違うと思いますが、このような流れでおこなっております。
6.課題はどんなものが出てきたのか
では実際にどのような課題が出てきたのか、実例をいくつかご紹介したいと思います。
まず課題①です。
アイデアが複数ある場合。これは先ほどUXリサーチを利用するタイミングでいう企画段階です。概要としては新規で実装したいアイデアが複数あるため、そのアイデアの受容性を知りたいといったものでした。
手順としては、アイデアについて詳細をヒアリングします。その後にインタビューでユーザーに具体的なイメージを持ってもらうためアイデアの利用状況と簡単なペルソナを作成します。その後インタビュー調査をおこないました。
その時のインタビューはアイデアが実際に利用されるような状況を体験したことがあるか、それはどのような体験だったかということを中心にインタビューをおこないました。インタビューの結果を基にアイデアの受容性を検討しレポートの作成をいたしました。
こちらの案件を通してわかったことは、ユーザーにインタビューしたことによりアイデアをブラッシュアップできたという点です。
クライアントが実装したいアイデアとユーザーが利用したい状況やそれに対しての要望を明確にクライアントに共有できたことによって、アイデアのブラッシュアップにつながりました。
次に実装をする前の段階でアイデアを検討することにより、無駄な工数の発生が防げることです。このときはまだ試作ですらできていない状態ですので、まだ工数が発生していない状態でリサーチをおこないました。
そうすることにより「この機能は使っていない」といった意見が出たり「こういった方針なら利用したい」といった意見が出ましたので、開発前にある程度ユーザーの希望に沿った設計を検討することができました。
開発に「この機能は必要ないのではないか?」と言われてしまうような状況にも陥りませんので、工数の削減に有用だと個人的には思っております。
次の課題②は「デザインの方向性を決定したい」といったものでした。これが先ほどのUXリサーチを利用するタイミングでいう「リリース前の検証」に当たります。
概要としましてはデザイナーから受けた依頼で、自社のサービスの中で今まで実装したことがない機能を実装するため、その機能のデザインの方向性を決定したいというものでした。
具体的な例でいいますと、
例えば、今まで写真一覧を表示していたサイトを見やすく改善するため、カルーセルを導入したいとしましょう。しかし今まで導入したことがない機能ですので、ユーザーに受け入れられるか不安な面もあります。
次に手順としてはこのような形になっております。
どのようなことを明らかにしたいかデザイナーにヒアリングをします。その後に「どうすればデザイナーの明らかにしたいことを明確にできるか」といった観点で手法の検討やユーザーにおこなっていただくタスクの検討をおこないました。
次にプロトタイプを触っていただきながらユーザビリティ調査をおこないます。そしてインタビューの結果をまとめ、デザイナーとインタビュー結果について話し合い、発見点をお互い共有します。次にレポートの作成をおこないます。
これにより分かったこととしましては、
クリエイターと並走しながらリサーチをおこなうことにより、ユーザーに沿ったデザインが早い段階で検討できるということです。
また早いうちに検討することにより、開発工数の削減につながり、クリエイター自身も裏付けが取れた状態で開発ができるようになりますので、クリエイターも自信を持って設計ができるようになります。
次に調査結果を計画に残すということにより、手戻りが少なくなります。
これはどの調査にも言えることなのですが、正確に調査レポートをまとめておくことで、前の試作で修正した部分を再び修正する機会が少なくなります。
続けて課題③を説明させていただきます。
次の課題に関しましては、中途採用に関わる一連の動きを対象にリサーチをおこなったものです。段階でいうとリリース後の検証に当たります。
概要としては採用率を向上させるため現状分析をおこない、改善案を提案するといったものでした。
手順としては、現状どのように採用をおこなっているのか採用担当にヒアリングをしました。
次に掲載媒体の調査をおこないます。この時はターゲットユーザーになったつもりで、現在採用を掲載しているサイトの閲覧や操作を実際におこなうシーンを想像しながら、課題点を見つけ出す認知的ウォークスルーをおこないました。
その次に課題の仮説を立てまして、社員を対象に転職活動の経験についてインタビューを実施しました。その後KA法で分析し、レポートを作成しました。この時どうしてKA法を使用したのかと言いますと「ユーザーが転職活動に求める価値」を明らかにしたかったためです。
その後、簡単なペルソナやジャーニーを作成し、共通認識を取り、改善案の考案をさせていただきました。
そして分かった点といたしましては、まず1つ目は全く別の視点からの改善点が見つかったということです。
私たちやクライアントは仮説を立ててある程度「このような課題が見つかりそう」などと予想をしていたのですが、分析をしていくうちに、仮設とは別に「そういえば転職活動をするうえでこの情報が足りていなかった」とか「これは盲点だった」などという気づきを得ることができました。
また「転職活動時にこういったことを思っているから、この不安はこの段階で解消しないと前に進めない」といったように、施策を実装するタイミングまで検討できるのはUXリサーチならではであると思っています。
次に複数の人が関わることにより、今まで検討したことがないようなアイデアが見つかったという点です。
今までは採用担当のみで試作を考えていましたので、少し似たような施策が多かったのですが、リサーチャーという第三者の視点が入ることにより、さまざまな角度から課題を見ることができたので、新たな施策案を得ることができました。
次に課題の④です。
こちらはECサイトを対象におこなった調査です。段階で言いますと、リリース後の検証に当たります。
概要は「今ある古いデザインから、ユーザーにとって使いやすい商品一覧ページのデザインを作りたい」といったものでして、Web関係者の方でしたらこういったことを思ったことも多いのではないかと思います。
手順としては「改善したいページがどのように使われているのか」利用状況を検討するアクセス解析などもこの時は利用しました。対象ページがどこのページから流入されていることが多いのかアクセス解析を使って確認したうえで利用状況を検討しました。
Webやアプリはアクセス解析ができるため便利です。ただユーザーが
「本当にやりたくてその行動をしているのか」
「仕方なくその行動をしているのか」
というところまではデータだけでは見えませんので、過信できないところはありますが、こういった目安をつける点では非常に参考になります。
次に想定した利用状況をもとにリモートユーザーテストをおこないました。この時はユーザーに実際に運用中のサイトを触っていただきながらタスクをおこない、その様子を観察するユーザビリティテストをおこないました。
その後分析し、レポートを作成します。課題点をもとに改善案を反映させたワイヤーを提案いたしました。
分かった点といたしましては、サイト全体の方針の「共通認識」ができたという点です。
そもそもこの依頼をされたことにより、クライアントからこのサイトをどうしていきたいのかという方針を初めてアウトプットしてもらうことができました。
そうすることで、制作全体にこのサイトの今後の方向性を知ってもらい、全体の共通認識が図れたため、この企画をきっかけに納得感を得ながら実装ができるようになったとデザイナーやクリエイターの方に感じてもらうことができました。
次に対象のページの利用状況を改めて検討することにより、ユーザーが利用したいページの動線を再確認できたという点です。
こちらの案件はECサイトだったのですが、ECサイトと言いますとページ内に導線がいくつもあり、ユーザーの利用したい導線とクライアントが利用してもらいたい動線に結構食い違いが発生しがちですが、この調査をおこなったことによって食い違いが発生しているということに気づき、次のスタッフでユーザーが利用したい導線とクライアントが利用してもらいたい導線の折衷案についてを検討することができました。
このように粒度の大きいリサーチから、細かいデザインの検討まで、様々な課題が出てきて、それぞれ有用な示唆が出てくるということが、分かっていただけたのではないかと思います。
ここまで私が担当してきた業務をいくつか紹介させていただきましたが、こういった経験の中で、私が考える「UXリサーチの価値」を2つ挙げさせていただきます。
1つ目はUXリサーチはユーザーとクリエイターやクライアントをつなぐことができるということです。今まで紹介した事例でもしUXリサーチをおこなわなかったらユーザーの気持ちを知らずに、納得感が得られないままプロダクトやサービスを制作していき
「これは大丈夫なのだろうか」
「これは本当にユーザーに受け入れられるんだろうか」
といった不安に感じる場面が絶対に出てくると思います。
そこでUXリサーチをおこなって、ユーザーの意見を知ったり改善していくことでユーザーとつながりができます。そうすることでこの不安自体をまず解消することができるのではないかと思います。不安をそもそも消すこと自体、とても価値があることではないかと個人的に思っています。
2つ目はUXリサーチをおこなうことで、プロダクトやサービスと向き合うきっかけになるということです。
UXリサーチをおこなうと、普段何となく続けてきたことや普段見落としていたことに意見が入ることがあります。
そのときに「なぜこういった仕様にしていたのか」という気づきを得ることができます。私自身もデザイナーを担当しておりましたので、気持ちがすごくわかるのですが、こういったきっかけからプロダクトやサービスに新たな着眼点から向き合うことができて、このサービスやプロダクトの存在価値を見直すきっかけになるのではないかと思います。そういった点でもUXリサーチをすることにとても価値を感じております。
またこういった気づきというのは、UXリサーチャーとクリエイターやクライアントが話し合っている時に生まれることが多いように思いますので、結果を共有する時というのはレポートを渡すだけではなく、話し合いながら共有するとよりよいアイデアが生まれるのではないかと思います。
7.私が考えるユーエックスワンクリエイターの強み
少し話が逸れますが、業務をおこなっていくうえでユーエックスワンのクリエイターの強みを少しご紹介させてください。
①案件の把握が容易なため 踏み込んだリサーチができる
まず1つ目は常駐支援型サービスのため、リサーチを依頼された場合、案件の把握が容易で、踏み込んだリサーチができるといった点です。
踏み込んだリサーチと言えば、例えば今クライアントが悩んでいる課題点をいち早くピックアップしたり、1つのリサーチに複数の案件の内容を考慮することができるといった点です。
②常駐しているため 小規模で少しづつ始めることができる
2つ目は常駐しているため、小規模のリサーチも少しずつ始めることができる点です。先ほどお話しさせていただいた通り、UXリサーチは様々な粒度で案件を調査することができます。ただ、小さいデザインの検討だけ外部に依頼するのは、少し面倒だと感じる場面もあることも承知しております。
ユーエックスワンは小さい粒度でも対応可能ですし、常駐をしているため初めての一歩を踏み出すのに最適ではないかと考えております。
8.まとめ
では最後にまとめですが、
・UXリサーチはUXデザインをおこなうための手段の1つ
・UXリサーチから得られる発見点は多い
・UXリサーチは小さいテストからでも実装することが可能
・UXリサーチはユーザーとクリエイター/クライアントをつなぐことができる
・UXリサーチをおこなうことで真剣にプロダクトやサービスと向き合うきっかけになる。
このようなところです。
今回のウェビナーを通して、UXリサーチの業務について少しでもイメージしていただけたら幸いです。以上ご静聴ありがとうございました。
Q&A
Q1:実例において、どのような業種・企業の話なのでしょうか? BtoBなのか、BtoCなのかお伺いしても大丈夫でしょうか?
田尾
基本はすべてBtoCの企業さまの案件です。業種は採用関係は人材派遣系、Webの改善はECですので、健康食品系です。他の2つはメーカーさまのものです。
Q2:UXリサーチ上、インタビューは何名くらい実施してプロダクトに反映するものでしょうか? 1〜3名くらいで判断してしまっても大丈夫なものでしょうか。
田尾
最低でも5人くらいはおこなうようにしております。やはり1〜3名ですと回答の系統が判断しづらい部分がありますので、できれば5名以上が望ましいと思います。5名以上であれば、だいたいの回答の傾向が得られます。
また過去の事例ですと、アイデア検証に関しましては30人規模になったことはあります。
Q3:検討の結果1ヵ月かかる予定がテストのせいで1日で調査してしまっているなど、当初の想定との乖離が目立つことはないでしょうか?
田尾
一般ユーザーの場合は「特にない」とは思います。
実際のテストの時のモデレーターのさじ加減次第にはなりますが、例えば慌ててプロトタイプを作った場合などは、実際に被験者に触っていただくときに未完成のページがあることを事前にお伝えして、最低限の部分だけをプロトタイプとしてつくることがよいのではないかと思います。
Q4:UX改善を取り込む雰囲気を社内で浸透させていくにはどういった方法がいいでしょうか?
田尾
個人的な話として、UXリサーチにあまり取り組んでいなかった企業さまに常駐させていただいた際、規模が小さいユーザーテストを少しずつおこなっていき「こういったところが評価されているようです」「こういった意見が出ています」ということを証明していき、結果的に「私たちも本格的にやってみよう」ということで導入に進んだ件がございます。
最初から大きい規模のものをおこなってしまうと、クライアントさんも驚いてしまいますので、小さいところから始めてみたり、また普段から「UXは必要不可欠です」という啓蒙活動、勉強会を実施してみることから始めるとよいのではないかと思います。
Q5:ある改修施策で「UXの観点からこうした方がよい」と提案することができても、そこに5万円の予算内で仕様を固めていくのか、100万以上かけても実現すべきことなのか、提案された側も判断に迷うと思います。納得感のある提案とするにはどうすればいいでしょうか?
田尾
でも実装できなかったら仕方ありませんので、こうなった場合は「折衷案」を提案するのがよいのではないかと思っています。
例えば、UXの改善というのもいくつか例が出てきまして、一番よいのはサイトの大きいところを変えてしまうところですが、それをおこなうと、費用や時間工数を多く使ってしまいます。
ですので、いくつか案が出せるようであれば「松竹梅」といった感じで提案する方法がよいのではないかと思います。一番安くて一番手軽なものをおこなった後「では次のレベルに進んでみよう」といった風に段階を踏むことができますので、3段階くらいに分けて提案するのがよいのではないかと思います。
私の経験では、予算自体はないのですが「工数」は気にします。忙しい中で改善案を出してすぐに改善を反映させたいといった場合には、例えばサイトマップから改善しましょうといったことは難しいと思いますので、そういった工数に対する考慮というものは提出したことがあります。
Q6:③の課題はどれくらいのチーム規模でおこなった案件でしょうか? UX組織を確立しようとしているのですが、実例からどれくらいの人数が必要なのか参考にしたいです。
田尾
チーム規模自体はリサーチャーは4人で、採用担当が2人です。そちらに加えてクライアントさんがお二人という状態でした。デザイナーやコーダーは別です。
チーム規模としてはそれぐらいでして、どれくらいの人数がいるのかということですが、確立しようとしているのであれば、1人でおこなおうとすると想像以上に大変ですので、仲間を増やすとか啓蒙活動の一環として、3〜4人ほどでまず作業を分配しながらおこなうとよいのではないかと思います。インタビューはおおむね5人ほどに対しておこなっていました。
Q7:例えば、あるユーザーテストの結果を複数名のUXリサーチ関係者が見た際、改善に向けた企画の内容はバラバラで、意見が少しずつ違ってきた場合はどうまとめることが多いですか?
田尾
私の場合であれば、工数的に実現が可能なもので優先順位をつけたり、大本に立ち返って「どのような目的でおこなっているのか」という考え方に一番ふさわしいものを優先すると思います。
Q8:UXを学ぶ際に、おすすめの書籍などがあれば教えてください。
田尾
「初めてのUXリサーチ」という本です。UXリサーチという概念について本書の方で説明してくださっていますので、知識がなくてもなんとなく「UXをやりたい」と思っている人に対してはこういった本が向いていると思いました。
これを読んだ後にUXの大元の教科書であったり、難しそうな本を選んでいくのがよいと思います。
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